あるところに一人の少年がいました
少年は、町で一人靴を磨いて生計を立てていました
少年は、孤独でした
親も無く、友達もいませんでした
ある日
いつものように路地でお客を待っていると
旅行者風の男が歩いてきました
男は、少年に言いました
「私の靴を磨いてくれるかな?」
少年は、「はい」と答え靴を磨き始めました
男は、少年が靴を磨いている間、自分が旅した国々の話をしました
黄金で彩られた国、海の中の国、高い塔で出来た国、空に浮かぶ国
少年は、楽しそうに聞いていました
そして男は、友情の国の話をしました
その国は、人々は、固い友情で結ばれているのだと男は、言いました
少年は、「素晴らしい国ですね」と、男に言いました
男は、少し苦笑しながら「そうだね」とだけ答えました
靴が磨き終わると男は、「ありがとう」と言って去っていきました
少年は、考えました
「友情の国なら僕も孤独から逃れられるかも」と
男と出会ってから数日後、少年は、旅に出ていました
友情の国に向かって
三つの大きな山と二つの大河を越えたところにその国は、ありました
少年は、嬉しさを抑えながらその国に入っていきました
友情の国は、みんな楽しそうに話し、笑っていました
少年は、思いました
「この国が僕の求めていたものだ」と
少年が町を歩いていると
男たちが一人の男を殴りつけていました
「どうしてその人を殴るの?」少年は、尋ねました
「こいつは、俺たちの友達を馬鹿にしやがった」
男の一人が答えました
「だからこうして殴っているのさ」
別の男が言いました
少年は、男達から離れ再び歩き始めました
すると、家の前で泣き叫んでる女がいました
家では、何人もの女が家の中をめちゃくちゃにしていました
「なんで家をめちゃくちゃにしているの?」少年は、尋ねました
「この女は、私達の友達の男を寝取りやがったのさ」一人の女が答えました
「だから私達がこうしてこの女の家をめちゃくちゃにしてるんだよ」別の女が答えました
少年は、再び歩き始めました
すると、手にナイフを持った男が歩いてきます
「ナイフを持ってどこに行くの?」少年は、尋ねました
「これから人を殺しに行くのさ」男は、答えました
「俺の友達に怪我をさせた奴を殺すんだよ」
「そんな理由で人を殺すの?」
「ああ、友達のためだからな」
「当たり前のことだろう」
そう言うと男は、歩いていきました
夜になり少年は、宿に行きました
そこには、見覚えのある男がいました
路地で靴を磨いた男です
男は、少年に気づくと「やあ」と手をあげ近づいてきました
「この国は、どうだい?」男は、尋ねました
「僕が思っていた様な所では、無いです」
「みんな傷つけあっていました」少年は、答えました
「そうだね」
「この国は、友情のためなら全てが許されるんだよ」
「この国の人たちは、そうやって暮らしているんだ」
「君は、この国で友達を見つけるのかい?」
「君は、友達のために人を殴ったり、殺したりすることが出来るかな?」
「僕は・・・・」少年は、答えられませんでした
「友達のためならどんなことも出来る、それがこの国の友達なんだよ」
「おかしいと思うかい?」
「でも、ほんとにおかしいのかな?」
「君には、友達がいない」
「友情というものを知らない」
「君は、友情が何なのかさえ分からない」
「それなのにおかしいと言えるのかな?」
「・・・・・・」少年は、何も言えませんでした
次の日少年は、国の外にいました
自分の国へ帰るために
友情の意味を考えながら・・・
第一部完
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